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【初心者向け】Rustとは?AI時代に学ぶ価値と将来性をレビュー

Rustとは何かを初心者向けに解説。メリット・デメリット、AI時代における価値と学習ロードマップを紹介。

2025-12-0712 min readAdabana Saki
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Rustプログラミング入門AIキャリア言語比較

Rustとは?AI時代に学ぶ価値と将来性をレビュー

「Rustが最も愛されている言語って聞くけど、実際どうなの?」

「C言語やC++の代わりになるって本当?」

「難しいって噂だけど、初心者でも学べる?」

あなたは今、こんな疑問を持っていませんか?

Rustは、Stack Overflowの開発者調査で8年連続「最も愛されている言語」に選ばれた、注目のプログラミング言語です。安全性と速度を両立させた設計が評価され、Microsoft、Google、Amazon、Discordなど大手企業が採用を進めています。

この記事では、Rustとは何か、なぜ注目されているのか、AI時代における立ち位置を、現役エンジニアの視点からお伝えします。

Rustとは何か?超やさしく説明

Rustは、「安全で高速なシステムプログラミング」を実現するために設計された言語です。

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「システムプログラミング」とは、OS、ブラウザ、データベース、ゲームエンジンなど、コンピュータの基盤となるソフトウェアを作る領域です。従来はC言語やC++が使われてきましたが、これらの言語はメモリ管理のミスによるバグやセキュリティ問題が起きやすいという課題がありました。

Rustは、この課題を言語レベルで解決しようとしています。

Rustはなぜ生まれたのか

Rustは2006年、Mozilla社員のグレイドン・ホアレが個人プロジェクトとして開発を始めました。

当時、Webブラウザ(Firefox)の開発で使われていたC++は、高速だけれどメモリ安全性の問題が頻発していました。「C++並みの速度を維持しながら、メモリ関連のバグをコンパイル時に防ぐ言語」というのが、Rust開発の動機です。

2015年に正式版(1.0)がリリースされ、以降急速に普及しています。

Rustの主な特徴

1. メモリ安全性の保証

Rustの最大の特徴は「所有権システム」です。変数がメモリの「所有者」となり、所有者がスコープを抜けると自動的にメモリが解放されます。ガベージコレクタ(GC)なしでメモリ安全を実現しています。

2. ゼロコスト抽象化

高レベルな書き方をしても、実行時のオーバーヘッドがありません。抽象的で読みやすいコードが、C言語並みの速度で動きます。

3. 並行処理の安全性

複数のスレッドが同時にデータにアクセスする際のバグ(データ競合)を、コンパイル時に検出します。これにより、マルチスレッドプログラミングの難しさが大幅に軽減されます。

4. 優れたエラーメッセージ

Rustのコンパイラは非常に親切で、エラーの原因と解決策を具体的に教えてくれます。

5. 強力なパッケージマネージャー

Cargoというツールで、依存関係の管理、ビルド、テスト、ドキュメント生成がすべて統一されています。

Rustのメリット・デメリット

観点メリットデメリット
性能C/C++と同等の実行速度学習と開発に時間がかかる
安全性メモリバグをコンパイル時に防止コンパイルが通るまでが大変
設計堅牢なアーキテクチャを強制される「とりあえず動く」が難しい
キャリア希少価値が高く高収入傾向求人数自体はまだ少ない
AI時代AIが苦手な領域で強いAIのサポートは他言語より少ない

他言語との比較

比較項目RustC++GoPython
実行速度最速クラス最速クラス速い遅い
メモリ安全性言語が保証自己責任GCで自動GCで自動
学習難易度
開発速度遅め遅め速い速い
用途システム開発システム開発サーバーAI・スクリプト

RustはC/C++の「速度」とPython/Goの「安全性」を両立しようとしていますが、その代償として学習コストが高くなっています。

Rustの実務での使用例

  • システム開発: Linux カーネル、Windowsの一部、Android
  • WebAssembly: ブラウザで動く高速アプリケーション
  • CLIツール: ripgrep、bat、exa(高速なコマンドラインツール)
  • インフラ: Cloudflare Workers、AWS Firecracker
  • ゲーム開発: 高性能なゲームエンジン
  • 暗号資産: Solana、Polkadotなどブロックチェーン基盤

Discordは「数百万人が同時接続するサービスをRustで書き直し、パフォーマンスが10倍改善した」と報告しています。

AI・バイブコーディング時代とRustの相性

ChatGPT、Claude、GitHub Copilot、CursorといったAIツールとRustの関係は、他の言語とは少し異なります。

正直に言うと、AIとRustの相性は「やや難しい」です。

AIがRustを苦手とする理由

  1. 所有権システムの複雑さ: AIは所有権、借用、ライフタイムを正しく扱うのが苦手
  2. 学習データの量: Python/JavaScriptに比べて、Rustのコード例は圧倒的に少ない
  3. コンパイラが厳格: 「動くけど最適ではない」コードが、そもそもコンパイルを通らない

しかし、だからこそ価値がある

バイブコーディングで「雰囲気で書かせる」開発が広まる中、Rustはその対極にあります。

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Rustを学ぶということは、「AIが代替しにくい領域」で戦える力を身につけることでもあります。

Rustが向いている人・向いていない人

向いている人

  • 「なぜ動くのか」を深く理解したい人
  • パフォーマンスやメモリ効率に興味がある人
  • 長期的に価値のあるスキルを身につけたい人
  • すでに他の言語を習得しており、次のステップを探している人
  • システムプログラミングやインフラに関わりたい人

向いていない人

  • プログラミング完全初心者(まずPythonかJavaScriptから)
  • 素早く動くものを作りたい人(開発速度は遅い)
  • Webアプリケーション開発だけをしたい人(他に適した言語がある)

Rustを学んで後悔するパターン

  • 最初の言語として選ぶ → 挫折率が非常に高い
  • 「流行っているから」という理由だけで学ぶ → 用途がなく使わなくなる
  • 短期間でマスターしようとする → 所有権の概念で詰まる

初心者がRustを学ぶときの具体ステップ3つ

ステップ1: 前提知識を固める(推奨)

他の言語(Python、JavaScript、Cなど)の基礎を理解してからRustに挑戦することを強く推奨します。変数、関数、ループ、条件分岐、データ構造の概念が分かっていると、Rustの学習がスムーズになります。

ステップ2: 公式教材で基礎を学ぶ(1-2ヶ月)

「The Rust Programming Language」(通称「The Book」)を読み進めます。所有権、借用、ライフタイムの章は特に重要です。分からない部分はChatGPTに質問しながら進めましょう。ただし、AIの回答が間違っていることもあるので、コンパイラのエラーを信じてください。

ステップ3: 小さなCLIツールを作る(2-4週間)

ファイル操作、JSON処理、HTTP通信など、実用的な小さなツールを作ります。最初から完璧を目指さず、「コンパイルが通る」ことをゴールにしましょう。Rustlingsという練習問題集もおすすめです。

まとめ

Rustは、AI時代においても「人間が深く理解すべき領域」で輝く言語です。

学習コストは高いですが、その分、身につけた知識の価値は長く続きます。所有権システムを理解することは、コンピュータがどのようにメモリを扱うかを理解することでもあり、それはすべてのプログラミングに活きる知識です。

「最初の言語」としてはおすすめしませんが、プログラミングの基礎を身につけた後の「次のステップ」として、Rustは非常に良い選択肢です。

まずは公式サイトでインストールし、cargo new hello-rust を実行してみてください。厳格なコンパイラに怒られながらも、一つずつ理解を深めていく過程は、きっとあなたを成長させてくれます。

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参考リンク